香川県を拠点に、医療・介護・保育の現場で、感染対策の相談、職員研修、マニュアル・BCP整備など、現場に合った「無理なく続けられる感染対策」の支援を行う、感染管理認定看護師の横山達也です。
香川県が公表した2026年第34週(8月17日〜8月23日)の感染症週報では、新型コロナウイルス感染症を含む定点把握感染症の報告患者総数は160人でした。前週の189人に対して84.7%となり、29人、割合にして15.3%減少しています。
今週、香川県内に流行警報は発令されていません。
一方、全国ではインフルエンザの定点あたり報告数が1.11人となり、流行開始の目安とされる1.00人を上回りました。香川県全体は0.6人で、現時点では流行入りとはいえませんが、0.1人、0.3人、0.6人と3週連続で増加しています。
9月に入り学校が再開すると、人との接触機会が増え、流行が拡大する可能性があります。今のうちから、症状の早期把握、手洗い、咳エチケット、換気などの基本対策を確認しておきましょう。
この記事では、香川県感染症週報2026年第34週をもとに、今週の特徴と施設で確認したい感染対策をわかりやすく解説します。
1. 今週の全体像
2026年第34週の定点把握感染症の報告患者総数は160人で、前週の189人に対して84.7%でした。

今週のポイントは次の6点です。
- 香川県内に流行警報の発令はなし
- 全国ではインフルエンザが流行入り
- 香川県のインフルエンザは定点あたり0.6人で、3週連続して増加
- 感染性胃腸炎(ウイルス)は前週比143.3%へ増加
- 流行性角結膜炎は前週比228.6%へ増加
- 全数把握感染症では、SFTSが小豆地区から1件届出
急性呼吸器感染症(ARI)全体の報告は731人、定点あたり31.8人で、前週の34.5人から減少しました。ただし、小豆地区は定点あたり47.5人、中讃地区は35.3人と、県平均を上回っています。
定点あたり報告数は、県内すべての患者数ではなく、指定された定点医療機関からの報告をもとにした値です。実際の患者数そのものではなく、流行の傾向を見るための指標として確認してください。
2. 定点把握感染症の動向
今週の上位5疾患は以下のとおりです。

新型コロナウイルス感染症、ヘルパンギーナ、手足口病は前週より減少しました。一方、感染性胃腸炎(ウイルス)とA群溶血性レンサ球菌咽頭炎は増加しています。
また、上位5疾患には含まれていませんが、インフルエンザと流行性角結膜炎の増加にも注意が必要です。
3. 全国ではインフルエンザが異例の早さで流行入り
厚生労働省によると、2026年第34週の全国のインフルエンザ報告数は4,094人、定点あたり1.11人となり、流行開始の目安である1.00人を上回りました。

今回の流行入りは、前年から連続して流行入りの状態だった2023年を除くと、感染症法が施行された1999年以降では2009年に次いで2番目に早い時期です。昨年は第39週に流行入りしており、今年は5週早い流行入りとなりました。
▶厚生労働省「インフルエンザの発生状況について(2026年8月28日)」
香川県は流行開始の目安未満。ただし3週連続で増加
香川県では、インフルエンザが14人、定点あたり0.6人報告されました。前週の0.3人から倍増しており、2週前の0.1人と比べても増加しています。

地区別では、高松市が定点あたり1.1人で、地区単位では流行開始の目安を上回っています。東讃地区と西讃地区は各0.5人、中讃地区は0.1人で、小豆地区からの報告はありませんでした。
年齢別では14人のうち11人が14歳以下で、3歳から14歳を中心に報告されています。30歳代、40歳代、60歳代からも各1人の報告があり、子どもだけの感染症と考えず、家庭や職場への広がりにも注意が必要です。
9月に入り学校や園が再開すると、子ども同士の接触機会が増え、家庭や地域へ広がる可能性があります。ただし、今後必ず拡大するという意味ではありません。地域の報告数や施設内の欠席状況を確認しながら、早めに備えることが大切です。
施設では、次の点を確認しましょう。
- 発熱、咳、倦怠感などの症状を早期に把握できる体制になっているか
- 症状がある利用者・患者・子ども・職員が無理に出勤・登園・登校しないよう周知できているか
- 手洗いとマスクの着用を含む咳エチケットを実践できているか
- 待合室、居室、教室、保育室、職員休憩室などを適切に換気できているか
- 集団発生時の報告先、連絡手順、ゾーニング方法を確認できているか
4. 感染性胃腸炎と流行性角結膜炎が増加

感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は46人、定点あたり3.5人で、前週の2.4人から増加しました。このうちウイルス性は43人、定点あたり3.3人で、前週比143.3%です。
地区別では、中讃地区が定点あたり6.3人、ウイルス性に限ると5.5人で、県平均を上回っています。年齢別では、46人のうち45人が14歳以下で、特に1歳の報告が13人と多くなっています。
保育施設や家庭では、おむつ交換後やトイレ介助後、食事前の石けんと流水による手洗いを続けましょう。下痢や嘔吐がある場合は、症状が治まった後も便から病原体が排出されることがあるため、排泄物を扱う場面での対策が重要です。
流行性角結膜炎
流行性角結膜炎は16人、定点あたり3.2人で、前週の1.4人から増加しました。前週比は228.6%です。
高松市から10人、東讃地区から6人の報告がありました。目の充血、目やに、まぶたの腫れなどを早めに把握し、目に触れた後の手洗いを徹底しましょう。
タオル、洗面用品、点眼薬など、眼や顔に触れる物品を共用しないことも重要です。症状がある人が使用したタオル類は、ほかの人のものと分けて管理しましょう。
5. 小児を中心にみられる感染症
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは14人、定点あたり1.1人で、前週の1.2人からわずかに減少しました。前週比は87.5%です。
東讃地区は定点あたり4.0人で、県平均を上回っています。発熱やのどの痛みにより水分が取りにくくなることがあるため、水分摂取量、尿量、活気など全身状態を観察しましょう。
手足口病
手足口病は9人、定点あたり0.7人で、前週の1.5人から減少しました。前週比は47.4%です。
9人全員が4歳以下で、中讃地区から7人、東讃地区と高松市から各1人の報告がありました。流行警報は発令されていませんが、乳幼児が集団生活を送る施設では、排泄物の適切な処理と手洗いを継続しましょう。
ヒトメタニューモウイルス感染症(hMPV)
hMPVは3人、定点あたり0.2人で、前週の0.7人から減少しました。3人はいずれも2歳以下です。
呼吸状態、哺乳・食事量、活気などを観察し、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、水分が取れないなどの様子がある場合は、早めの受診につなげましょう。
手足口病・ヘルパンギーナなどの特徴や対策は、こちらの記事にもまとめています。
▶【保育施設向け】今、流行している三大夏かぜ―手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱
6. 新型コロナウイルス感染症は減少
新型コロナウイルス感染症は28人、定点あたり1.2人で、前週の2.7人から減少しました。前週比は44.4%です。
地区別では、中讃地区が2.1人、東讃地区が2.0人、小豆地区が1.0人、高松市が0.6人、西讃地区が0.5人でした。県内すべての地区から報告があり、乳幼児から80歳以上まで幅広い年代で確認されています。
前週より減少していますが、報告がなくなったわけではありません。高齢者や基礎疾患のある人が利用する医療機関・介護施設では、職員を含めた症状の早期把握、咳エチケット、手指衛生、換気を続けましょう。
7. 全数把握感染症の届出状況
今週届け出られた全数把握感染症は以下のとおりです。

1類感染症と3類感染症の届出はありませんでした。これらは診断後に届け出られた件数であり、週報だけで感染場所や施設との関連を判断することはできません。
SFTSは、主にウイルスを保有するマダニに刺されることで感染します。マダニは春から秋に活発に活動するため、屋外や山では長袖・長ズボンを着用して肌の露出を減らし、忌避剤を使用しましょう。
8. 病原微生物検出情報
細菌および薬剤耐性菌遺伝子の検出報告はありませんでした。
ウイルスでは、次の病原体が検出されています。

同じ検体から複数のウイルスが検出されている事例もあります。また、検体採取日は8月2日から12日であり、第34週の患者発生を直接示すものではありません。
病原微生物検出情報は限られた検体に基づくため、県内で流行するすべての病原体の割合を示すものではありません。
9. 今週の気象と感染対策
第34週の平均気温は30.4℃で、過去30年平均の28.5℃を1.9℃上回りました。平均湿度は67.1%です。
9月が近づいても厳しい暑さが続いています。換気を行う際は室温を確認し、冷房を適切に併用して、感染対策と熱中症対策を両立させましょう。
また、暑い時期は食品の温度管理にも注意が必要です。調理後の食品を室温に長時間放置せず、加熱する食品は中心部まで十分に加熱してください。
10. 施設種別の対応ポイント

医療機関・診療所
- 受付時に発熱、咳、下痢、眼症状などを把握し、必要に応じて待機場所や診察動線を調整する
- インフルエンザの増加を見据え、検査・診療・職員配置の手順を確認する
- 待合室や診察室の換気状況を確認する
- 眼症状がある患者に対応した後は、手指衛生と接触した環境の清掃を徹底する
介護施設
- 利用者だけでなく、職員の発熱や咳なども早期に把握する
- 居室や共用スペースに加え、職員休憩室や更衣室の換気も確認する
- 面会時は、来訪者の体調確認、手指衛生、状況に応じたマスク着用を案内する
- 複数人に症状がみられた場合の報告先、情報共有、ゾーニング手順を確認する
保育施設・こども園・学校・病児保育
- 学校や園の再開後は、欠席者数と症状の傾向を継続して確認する
- 食事前、トイレ後、おむつ交換後は、石けんと流水による手洗いを徹底する
- タオルやコップ、点眼薬など、顔や眼に触れる物品の共用を避ける
- 発熱、咳、下痢、眼症状などを早めに把握し、保護者と情報を共有する
おわりに
2026年第34週の香川県では、定点把握感染症の報告患者総数が前週より15.3%減少し、流行警報も発令されていません。
一方、全国ではインフルエンザが異例の早さで流行入りしました。香川県全体は定点あたり0.6人で流行開始の目安を下回っていますが、3週連続で増加し、高松市は1.1人となっています。
9月の学校・園の再開後に流行が拡大する可能性もあるため、警報が出てから対策を始めるのではなく、今のうちから症状の早期把握、手洗い、咳エチケット、換気、体調不良時に休みやすい環境づくりを進めましょう。
また、感染性胃腸炎と流行性角結膜炎も増加しています。呼吸器症状だけでなく、下痢・嘔吐や眼症状にも注意し、施設内で複数人に同じ症状がみられた場合は、早めに情報を集めることが大切です。
「インフルエンザの流行に備えて、施設の対応手順を確認したい」
「感染症が発生したときの報告やゾーニングに不安がある」
「職員に今の流行状況をわかりやすく伝えたい」
そのようなときは、つなぐ感染対策支援室へお気軽にご相談ください。
医療機関、介護施設、保育施設など、それぞれの現場の人員・設備・業務に合わせて、無理なく続けられる感染対策を一緒に考えます。
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