香川県感染症週報(第21週)速報解説— ヒトメタニューモウイルスの急増に要注意

感染症流行状況

こんにちは。つなぐ感染対策支援室の横山です。

今日から6月になりました。
開業して2か月記念日ですが、付き合いたてのカップルみたいにメモリアルデーを細かく設定するとあとがしんどくなるので、今日もお仕事をがんばります。
ちなみに当初は6月1日を開業予定日にしていました。訳あって2か月繰り上げて開業するというクレイジーなことをしたので、本当に走りながらいろいろ整えてきた感じです。
そんな6月も引き続きいろいろ整えながら、皆さまのニーズに応えられるようがんばります。

さて、今回は2026年5月18日〜24日(第21週)の香川県感染症週報を解説します。
今週は報告患者総数が前週より減少したものの、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)が前週比266.7%と急増しており、施設での集団感染防止に向けた早めの対応が求められます。地域の医療機関・介護・保育施設の管理者の方々にとって参考となる情報をまとめました。

出典:香川県感染症週報・月報


今週の全体像

2026年第21週(5月18日〜24日)の香川県内の定点把握感染症における報告患者総数は107人で、前週(134人)から約20%減少しました。

数字だけ見ると落ち着いているように見えますが、減少の主な要因は感染性胃腸炎の件数が落ち着いてきたことによるものです。一方で、後述するヒトメタニューモウイルス(hMPV)や溶連菌咽頭炎は増加傾向にあり、全体的な患者数の減少に安心せず、個々の疾患動向を注視することが重要です。


定点把握感染症の動向

今週は複数の感染症で増加傾向が見られ、特に注意が必要な週となっています。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は定点あたり0.2人から0.6人へと前週比266.7%と急増しており、今週もっとも警戒すべき感染症です。西讃地区では「やや流行」レベルに達しています。年齢別では1〜3歳の乳幼児に集中しており、保育施設・病児保育・小児病棟での対応強化が求められます。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌)は定点あたり1.2人と前週比136.4%で増加しており、高松市・西讃でやや流行しています。学童期(6〜10歳)に多く見られますが、成人への感染も起こりえます。抗菌薬による適切な治療と、治療完了まで登園・登校を控える指導が感染拡大防止につながります。

手足口病は定点あたり0.3人と前週比200%ですが、絶対数はまだ少なく散発レベルです。ただし例年6〜8月にかけて流行のピークを迎える感染症であり、今後の増加に備えた準備が必要です。

感染性胃腸炎(ウイルス性)は前週比70.9%と減少傾向にありますが、定点あたり4.3人と依然として過去5週平均(5.0人)に近い水準であり、引き続き手洗いや食品衛生管理の徹底が求められます。


今週もっとも注目すべき動向:hMPV急増

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年に初めて同定された比較的新しい呼吸器ウイルスで、パラミクソウイルス科に属します。RSウイルスと類似した臨床像を示し、発熱・鼻汁・咳嗽などの上気道症状から、重症例では細気管支炎・肺炎へと進行することがあります。

過去10年平均(0.1人/定点)と比較すると、今週の0.6人という数値は約6倍に相当し、これは単なる季節的な変動の範囲を超えた動きです。グラフが示す通り、4週間にわたって横ばいだった数値が今週だけで急激に跳ね上がっており、今後さらに増加する可能性があります。

特効薬(抗ウイルス薬)は現時点では存在しないため、対応は支持療法が中心となります。施設での集団感染を防ぐためには、有症状者の早期把握・隔離飛沫・接触感染対策の徹底(マスク着用、手洗い・手指消毒、環境消毒)が有効です。


病原微生物検出情報

病原微生物検出情報は、実際に採取された検体からウイルスや細菌が同定された情報であり、定点報告の数字には現れない詳細な病原体サーベイランスとして重要です。

今週最も多く検出されたのはライノウイルスで、咽頭・糞便・鼻咽頭と複数の検体種から確認されています。ライノウイルスは200種以上の血清型を持ち、生涯を通じて繰り返し感染するため、成人の急性上気道炎の主要原因ウイルスの一つです。アルコール消毒が有効であるため、施設内での手指衛生の徹底が感染予防の基本となります。

RSウイルスB型は西讃で検出されています。乳幼児・高齢者・免疫低下者での重症化リスクが高く、施設入所中の高齢者では肺炎に至るケースもあります。乳幼児向けのニルセビマブ(長時間作用型モノクローナル抗体製剤)や、高齢者・妊婦向けのRSウイルスワクチンが2024年以降使用可能になっており、対象者への情報提供も有用です。

パラインフルエンザウイルス3型は不明熱として届出されており、特に乳幼児ではクループ症候群(犬吠え様の咳・喘鳴)の原因となりえます。

ヒトパルボウイルスB19(りんご病の原因ウイルス)は、妊娠中に初感染すると胎児水腫などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。施設や職場に妊婦がいる場合は、発疹のある子どもとの接触を避けるよう早めに情報共有をお願いします。なお、発疹が出た時点ではすでに感染力は低下していることが多いですが、発疹前の「風邪症状期」に最も感染力が強い点に注意が必要です。


今週の気象との関係

第21週の平均気温は22.9℃(過去30年平均20.4℃より約2.5℃高め)、平均湿度71.6%。気温・湿度ともに上昇しており、手足口病・ヘルパンギーナなど夏季に流行するエンテロウイルス系疾患の増加期に入りつつあります。感染性胃腸炎は減少中ですが、食中毒リスクが高まる時期でもあり、食品衛生管理の強化も重要です。


施設種別の対応ポイント

感染症対策は「すべての施設に同じ対応を」ではなく、施設の特性・入所者・利用者の背景に合わせた対応が重要です。

医療機関では、hMPVと溶連菌の増加を踏まえ、外来トリアージの段階での飛沫感染対策(サージカルマスク着用・換気)を再確認してください。また、成人の百日咳は典型的な「ひゅーひゅー」という笛声なしに長引く咳だけが続く場合があります。2〜3週間以上続く咳の患者には百日咳を念頭に置いた問診・検査が診断精度の向上につながります。

介護施設では、レジオネラ症の届出を受けて、入浴設備の管理状況の確認をおすすめします。特に循環式の浴槽・給湯設備は定期的な清掃・塩素濃度管理が必要です。加えてhMPVは高齢者でも肺炎に至る例があり、発熱や呼吸器症状のある入所者・職員は早期に医療機関へつなげる体制を整えておきましょう。

保育施設では、hMPV・手足口病が増加している今、登園基準と保護者への周知を今一度確認することをお勧めします。手足口病は解熱し、口腔内の水疱による食事への支障がなく、本人の全身状態が良好であれば登園可能ですが、施設ごとの基準に沿った対応をお願いします。また、りんご病の発疹を持つ子どもと妊婦職員・妊婦保護者との接触を避けるよう、園内での情報共有体制を整えておきましょう。


おわりに

今週の香川県感染症週報では、hMPVの急増をはじめ、溶連菌・手足口病の増加傾向、そしてレジオネラ症や百日咳の届出など、施設によってはすぐに対応が必要な情報が複数含まれていました。

感染症の流行は週ごとに変化します。週報のデータを「読むだけ」で終わらせず、自施設の状況と照らし合わせて「今、何をすべきか」に落とし込むことが、集団感染の予防につながります。


「感染対策のことは気になっているけれど、何から手をつければいいかわからない」 「マニュアルはあるけれど、実態に合っているか自信がない」 「職員への教育をもっと充実させたいが、時間も人手も足りない」

そのようなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度つなぐ感染対策支援室にご相談ください。

当室は、急性期医療機関での15年の臨床経験と感染管理認定看護師の専門知識をもとに、医療機関・介護施設・保育施設・歯科診療所など、さまざまな施設の感染対策をサポートしています。「難しい」「堅苦しい」ではなく、現場の実情に寄り添いながら、一緒に考えるスタイルで支援いたします。

対応内容の例

  • 感染対策に関するご相談(単発・継続どちらも対応可)
  • 職員向け感染対策研修・勉強会の企画・実施
  • 感染対策マニュアル・BCPの新規作成・見直し支援
  • アウトブレイク時の対応サポート

▶感染対策のご相談はこちらからお気軽にご連絡ください

コメント

タイトルとURLをコピーしました