保育施設で嘔吐が起きたら?感染を広げない嘔吐物処理の手順を感染管理認定看護師が解説

感染対策

保育施設での嘔吐対応、「その場しのぎ」になっていませんか?

こんにちは。つなぐ感染対策支援室の横山です。

保育園や幼稚園では、突然の嘔吐対応が必要になる場面は少なくありません。
特に感染性胃腸炎が流行する時期は、たった1件の対応から園内感染へ発展することもあります。

そして実際に影響を受けるのは、体調を崩した園児だけではありません。

  • 職員が感染して欠勤する
  • 人員不足で現場負担が増える
  • 他クラスへ感染が広がる
  • 保護者から不安の声が上がる
  • 園全体の信頼低下につながる

こうした事態は、保育現場では決して珍しくありません。

一方で、日頃から正しい嘔吐物処理を共有している施設では、

  • 職員への二次感染リスクを減らせる
  • 集団感染の拡大防止につながる
  • 現場が落ち着いて対応できる
  • 保護者へ「感染対策をしっかり行っている園」という安心感を提供できる

という大きなメリットがあります。

感染対策は、「専門職だけが知っていれば良い知識」ではなく、現場全体で実践できることが重要です。

今回は、保育施設で実践していただきたい「嘔吐物処理の基本」について、感染対策の視点からわかりやすく解説します。


なぜ嘔吐物処理が重要なのか

嘔吐物には大量のウイルスが含まれる

ノロウイルスなどの感染性胃腸炎では、嘔吐物や便の中に大量のウイルスが含まれています。

特に注意したいのは、

  • 嘔吐時に周囲へ飛沫が広がる
  • 床や衣類、玩具に付着する
  • 乾燥するとウイルスが舞い上がる

という点です。

保育施設では園児同士の距離が近く、玩具や環境表面を共有するため、一度感染が広がると集団発生につながりやすくなります。


保育施設で特に大切なこと

「すぐ拭く」より「人を近づけない」が重要

現場では、吐いてしまった園児を心配して周囲に人が集まりやすくなります。

しかし感染対策として最優先なのは、

  • 園児を近づけない
  • 他の職員を不用意に入れない
  • 処理担当者以外を現場に入れない

ことです。

私は感染対策で、「まず現場を閉鎖する」ことを特に重要視しています。


嘔吐物処理で準備するもの

事前に「嘔吐物処理セット」を準備しておくと迅速に対応できます。

準備しておきたい物品

  • 手袋
  • ガウン(またはエプロン)
  • サージカルマスク
  • 必要時はフェイスシールド
  • ペーパータオル
  • ビニール袋
  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • 使い捨てクロス
  • 専用バケツ

嘔吐物処理の基本手順

① 周囲を立入禁止にする

まず最初に行うことは、処理ではなく「隔離」です。

ポイント

  • 園児を現場から離す
  • 他職員も必要最小限にする
  • 可能であれば2m程度近づけない
  • 換気を行う

嘔吐物は見た目以上に広範囲へ飛散しています。

そのため、私は**「2mを目安に汚染されている可能性がある」**と考えて対応しています。


② 個人防護具(PPE)を着用する

処理前に必ず個人防護具を装着します。

着用するもの

  • 手袋
  • ガウン
  • マスク

必要時には、

  • フェイスシールド
  • ゴーグル

も使用します。

素手や普段着のまま処理を行うと、職員自身が感染するリスクがあります。


③ 嘔吐物をペーパーで覆う

まずはペーパータオルなどで静かに覆います。

注意点

  • 勢いよく拭かない
  • 飛び散らせない
  • 周囲から中心へ向かって集める

外側から中心へ向かって処理することで、汚染を広げにくくなります。


④ 次亜塩素酸ナトリウムで消毒する

嘔吐物を除去した後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。

嘔吐物処理には0.1%(1000ppm)次亜塩素酸ナトリウム液を使用します。
一般的な市販の塩素系漂白剤(濃度約5%)を使う場合、
 【水500mLに対して約10mL(キャップ約1杯)】を加えて希釈します
作り置きは効果が落ちるため、使用直前に作成することが原則です。

消毒時のポイント

  • 十分に浸すように使用する
  • 一定時間接触させる
  • 消毒範囲は広めにとる

新聞紙を使わない理由

現場では「新聞紙を使う」と聞くことがあります。

しかし、私は消毒時に新聞紙は使用しません。

理由

新聞紙のインク成分により、次亜塩素酸ナトリウムの消毒効果が低下する可能性があるためです。

そのため、

  • ペーパータオル
  • 使い捨てクロス

などを使用することをおすすめしています。


⑤ 個人防護具を外す

PPEを外す順番

  1. 手袋
  2. ガウン

の順で外します。

これは、汚染面への接触を減らすためです。

使用したものは汚染物として扱います。


⑥ 使用物品を廃棄し、手洗いする

廃棄するもの

廃棄するもの

  • 手袋
  • ペーパー類
  • ガウン
  • マスク

ビニール袋へ密閉し、さらにもう一枚ビニール袋に入れて廃棄します。

その後、

  • 流水
  • 石鹸

で速やかに手洗いを行います。

アルコールだけでは不十分な場合があるため、手洗いは非常に重要です。


保育施設で起こりやすい課題

「忙しくて対応が自己流になる」

保育現場では、

  • 人手不足
  • 同時対応
  • 園児対応

などから、処理が自己流になりやすい傾向があります。

しかし、感染対策は「知っている」だけではなく、実際にできることが重要です。


日頃からの準備が集団感染を防ぐ

嘔吐対応は突然発生します。

そのため、

  • 処理セットを準備する
  • 手順を共有する
  • 定期的に研修する

ことが非常に大切です。


まとめ

保育施設の嘔吐物処理では、

  • まず人を近づけない
  • PPEを着用する
  • 2mを目安に広範囲で対応する
  • 周囲から中心へ向かって処理する
  • 次亜塩素酸ナトリウムを適切に使用する
  • 新聞紙は消毒時に使わない
  • 処理後は手袋→ガウンの順で外し、手洗いする

ことが重要です。
この記事の要点を以下のフロー図にまとめました。
施設管理にお役立てください。

感染対策は、「誰かが感染してから」ではなく、日頃の準備で被害を最小限にすることができます。

つなぐ感染対策支援室では、保育施設向けの感染対策研修やマニュアル整備支援も行っています。
「今の対応で合っているか不安」
「職員教育を見直したい」
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