香川県を拠点に、医療・介護・保育の現場で、感染対策の相談、職員研修、マニュアル・BCP整備など、現場に合った「無理なく続けられる感染対策」の支援を行う、感染管理認定看護師の横山達也です。
香川県が公表した2026年第43週の感染症週報では、県内におけるインフルエンザ報告数は76人、定点あたり3.3人でした。前週定点の4.0人から減少しましたが、流行開始の目安となる定点あたり1.0人を9週連続で上回っています。
地区別では西讃が定点あたり9.5人と、流行注意報の基準となる10.0人に近い水準です。県全体の数値が下がっていても、地域によって流行状況が異なることに注意が必要です。
年齢別では、0〜14歳が44人、15〜59歳が18人、60歳以上が14人で、乳幼児から高齢者まで全年代から報告されています。今週も、手指衛生、換気、咳エチケット、環境清拭が日常業務として実施できているか、職員の体調不良時と施設内発生時の対応が整理されているかを確認しましょう。
この記事では、香川県感染症週報2026年第43週をもとに、県内の感染症動向と施設管理者が確認したい対策を解説します。
1. 今週の全体像

2026年第43週の新型コロナウイルス感染症を含む定点把握感染症の報告患者総数は182人でした。前週の220人に対して82.7%となり、38人減少しています。
一方、急性呼吸器感染症(ARI)全体は954人、定点あたり41.5人で、前週の40.8人からわずかに増加しました。疾患別の定点報告数が減っていても、咳、咽頭痛、鼻水、発熱などの急性呼吸器症状を呈する患者全体が減っているとは限りません。
- インフルエンザ:76人、3.3人/定点、前週比81.7%
- 感染性胃腸炎(ウイルス):37人、2.8人/定点、前週比82.2%
- RSウイルス感染症:15人、1.2人/定点、前週比75.0%
- マイコプラズマ肺炎:14人、1.1人/定点、前週比175.0%
- ヘルパンギーナ:8人、0.6人/定点、前週比200.0%
- 新型コロナウイルス感染症:7人、0.3人/定点
- 県内に流行警報地区・流行注意地区はなし
定点あたり報告数は、指定された定点医療機関からの報告をもとにした値です。県内すべての患者数そのものではなく、流行傾向を見るための指標として確認してください。特に定点数の少ない地区では、少数の増減でも定点あたり報告数が大きく動くことがあります。
2. 今週の上位疾患

上位3疾患は前週より減少しました。一方、マイコプラズマ肺炎とヘルパンギーナは増加しています。前週比だけでなく、報告数、地区別の値、自施設の欠席者や有症状者の動向をあわせて判断することが重要です。
3. インフルエンザは減少も、全年代で流行が継続

香川県内のインフルエンザは76人、定点あたり3.3人でした。前週の4.0人から減少しましたが、9週連続で流行開始の目安を上回っています。
直近9週間の推移

第43週は前週から低下しました。しかし、1週間の減少だけで流行が収束に向かっているとは判断できません。今後の推移を確認しながら、施設内の感染対策を継続する必要があります。
地区別の報告状況
| 地区 | 報告数 | 定点あたり報告数 |
|---|---|---|
| 高松市 | 12人 | 1.2人 |
| 小豆 | 7人 | 3.5人 |
| 東讃 | 3人 | 1.5人 |
| 中讃 | 35人 | 5.0人 |
| 西讃 | 19人 | 9.5人 |
西讃が定点あたり9.5人と最も高く、流行注意報の基準である10.0人に近い水準です。中讃5.0人、小豆3.5人と続き、全5地区から報告されています。現時点で、県内に流行注意報・警報地区はありません。
年代別の報告割合

子どもの報告が半数以上を占めますが、15歳以上からも32人の報告があります。「子どもの感染症」と捉えず、職員、利用者、患者、園児とその家族を含む全年代で注意が必要です。
4. 基本的感染対策が日常業務に落とし込めているか

感染症の流行時に「手洗いをしましょう」「換気をしましょう」と呼びかけるだけでは、忙しい現場の行動は変わりません。誰が、いつ、どこで、どのように実施するかまで決めておくことが大切です。
- ケアの前後や共用物品に触れた後に、手指衛生を実施できているか
- 咳、鼻水、咽頭痛などがある人へ、マスク着用を案内できているか
- 待合室、食堂、談話室、保育室に加え、職員休憩室や送迎車内も換気できているか
- ドアノブ、手すり、スイッチ、蛇口、共用端末、玩具などの高頻度接触面を計画的に清拭できているか
- 手指消毒剤や清拭製品の補充、使用期限、担当者を確認できているか
感染対策は、厳しくすることよりも、必要な対策を無理なく続けられる仕組みにすることが重要です。
5. 職員に発熱や感冒症状が出た場合

発熱、咳、鼻水、咽頭痛、倦怠感などがある職員には、無理をして出勤しないよう、あらかじめ周知しましょう。管理者への連絡方法と相談基準を明確にし、職員個人の判断だけに任せないことが大切です。
必要に応じて医療機関への受診や検査を勧めます。ただし、検査結果が陰性でも、感染を確実に否定できるとは限りません。発症から検査までの時間、検体採取の状態、検査方法などによっては、感染していても陰性となる場合があります。
出勤や復帰は「検査が陰性だった」という一点だけで決めず、次の要素を総合して慎重に判断します。
- 発熱や呼吸器症状の有無と程度
- 症状が改善しているか、悪化しているか
- 発症からの経過
- 周囲の流行状況や明らかな接触歴
- 高齢者、乳幼児、基礎疾患のある人などへの接触を伴う勤務か
- 施設内で同様の症状が増えていないか
職員が安心して休める雰囲気と、欠勤時に業務を補える体制づくりも感染対策の一部です。
6. 職員からインフルエンザ罹患者が出た場合

職員からインフルエンザ罹患者が出た場合は、施設内での広がりを早期に把握するため、発症日と最終勤務日、勤務した部署、休憩・食事・更衣を共にした職員、接触した患者・利用者、マスクを外した場面、分泌物に触れるケアの有無などを確認します。
接触した職員や利用者については、発熱、咳、鼻水、咽頭痛、倦怠感、食欲低下などの観察を強化します。症状が出た場合に、早めに勤務調整や受診相談へつなげられる体制を整えておきましょう。
オセルタミビルの予防投与を検討する場合の注意
医療機関や介護施設では、接触状況や施設内での感染拡大リスクを踏まえ、オセルタミビルなどの予防投与が検討されることがあります。ただし、接触者全員へ一律に投与するものではありません。曝露状況、発症・重症化リスク、基礎疾患などを確認し、医師が適応を判断します。
オセルタミビルは腎排泄型の薬剤であり、腎機能が低下している場合には、クレアチニンクリアランスに応じた用量または投与間隔の調整が必要です。医師の診察・処方のもと、薬剤師による腎機能、用量、併用薬などの確認を含め、安全に運用してください。
また、予防効果は服用している期間に限られ、発症を完全に防げるわけではありません。予防投与を実施した場合も、健康観察、手指衛生、換気、咳エチケット、環境清拭を継続します。
施設として予防投与を検討する可能性がある場合は、発生後に慌てて判断するのではなく、対象者、連絡先となる医師・薬剤師、腎機能の確認方法、服薬管理、費用負担などを平時から整理しておくとスムーズです。
接触者全員への一律検査や一律の就業制限が常に必要とは限りません。感染症の種類、接触の程度、症状、施設内の広がり、対象者の重症化リスクを踏まえて判断しましょう。
7. そのほか注目したい感染症
マイコプラズマ肺炎
小児科定点のマイコプラズマ肺炎は14人、定点あたり1.1人で、前週の0.6人から増加しました。地区別では小豆が11人、定点あたり11.0人です。小豆地区の小児科定点は1医療機関のため、定点あたり報告数は実数と同じ11.0人になります。
基幹定点でも11人、定点あたり2.2人で、前週の1.0人から増加しています。小児科定点と基幹定点は報告区分が異なるため、単純に合算することはできません。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は37人、定点あたり2.8人で、全例がウイルス性として報告されています。前週の3.5人から減少しましたが、中讃は定点あたり5.8人です。下痢・嘔吐症状の把握、おむつ交換後やトイレ介助後の石けんと流水による手洗い、嘔吐物・便の適切な処理、調理担当者の健康管理を確認しましょう。
RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は15人、定点あたり1.2人でした。15人全員が2歳以下です。乳幼児では、呼吸状態、哺乳量、顔色、活気の変化を丁寧に観察してください。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは8人、定点あたり0.6人で、前週の0.3人から増加しました。報告者は全員6歳以下です。発熱や口腔内の痛みにより水分摂取が低下することがあるため、脱水徴候にも注意します。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナは7人、定点あたり0.3人で、前週と同じ水準でした。報告数が少ない週でも、症状のある職員や利用者への対応は、インフルエンザなど他の呼吸器感染症と共通する基本対策を継続します。
8. 全数把握感染症・病原微生物検出情報

全数把握感染症は、結核4件(高松3件、東讃1件)、腸管出血性大腸菌感染症1件(西讃)、日本紅斑熱1件(東讃)の届出がありました。
日本紅斑熱はマダニが媒介する感染症です。屋外活動では肌の露出を減らし、忌避剤を使用し、帰宅後にマダニの付着がないか確認しましょう。腸管出血性大腸菌感染症への対策として、肉類を中心部まで十分に加熱し、生肉を扱った器具の洗浄・消毒、石けんと流水による手洗いを徹底します。
病原微生物検出情報には、hMPV、RSウイルスB、ライノウイルス5検体、水痘・帯状疱疹ウイルスが掲載されています。RSウイルスBとライノウイルスは同一検体から検出されています。細菌と薬剤耐性菌遺伝子の検出報告はありません。
検体採取日は10月9日から15日で、週報の対象期間より前です。また、病原微生物検出情報は限られた検体に基づくため、県内全体の病原体割合を示すものではありません。
9. 施設管理者が確認したいこと

- 手指消毒剤や手洗い設備が、必要な場所で使用できる状態か
- 人が集まる場所、職員休憩室、送迎車内の換気方法が決まっているか
- 咳や感冒症状がある人へ、マスク着用を案内できるか
- 高頻度接触面の清拭対象、担当者、頻度が決まっているか
- 職員が体調不良時に連絡する相手と方法が周知されているか
- 検査陰性だけを理由に出勤・復帰させる運用になっていないか
- 職員から罹患者が出た際、接触者を確認し、体調観察を強化できるか
- 予防投与を検討する場合の医師・薬剤師への連絡経路が決まっているか
- 腎機能、用量、併用薬を確認できる体制があるか
おわりに
2026年第43週、香川県の定点把握感染症の報告総数は前週より減少しました。インフルエンザも定点あたり3.3人へ低下しましたが、9週連続で流行開始の目安を上回り、西讃では定点あたり9.5人となっています。乳幼児から高齢者まで全年代から報告されているため、引き続き注意が必要です。
県全体の数値だけで安心せず、地域の流行状況と自施設の有症状者を確認しながら、手指衛生、換気、咳エチケット、環境清拭を日常業務として継続してください。
また、職員に発熱や感冒症状がある場合は無理をして出勤しないよう周知し、職員から罹患者が出た際は、接触者の洗い出しと観察を強化します。予防投与を検討する場合は、医師の判断と薬剤師との連携のもと、腎機能や用量を確認して安全に運用しましょう。
「職員の出勤基準を整理したい」「施設内発生時の初動や予防投与の手順を見直したい」「現場で続けられる感染対策を一緒に考えてほしい」というときは、つなぐ感染対策支援室へお気軽にご相談ください。
参考資料
更新履歴
- 2026年11月2日:2026年第43週(10月19日〜10月25日)の情報へ更新
- 2026年10月25日:2026年第42週(10月12日〜10月18日)の情報へ更新
- 2026年10月17日:2026年第41週(10月5日〜10月11日)の情報へ更新
- 2026年10月11日:2026年第40週(9月28日〜10月4日)の情報へ更新
- 2026年10月5日:2026年第39週(9月21日〜9月27日)の情報へ更新



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