【保育施設向け】今、流行している三大夏かぜ-手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱(咽頭結膜熱)の今シーズンの動きと、今日からできる対策

感染対策

毎年梅雨明けの時期になると、保育園や幼稚園で「今日もお休みの子が増えました」という声が増えてきます。今年(2026年)はその立ち上がりが例年よりかなり早く、特に手足口病は6月末の時点ですでに全国的な警報レベルに達しています。

この記事では、感染管理認定看護師の視点から、手足口病・ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱(プール熱)の3つについて、
①今の流行状況
②それぞれの病気の基礎知識
③保育施設で今日からできる感染対策
の順にまとめました。職員会議の資料としてもそのままお使いいただけます。


1. 今シーズンの流行状況(2026年7月時点)

国立健康危機管理研究機構(JIHS)の感染症週報によると、全国約2,350カ所の小児科定点医療機関からの報告で、手足口病は2026年第20週(5月中旬)ごろから増加が始まり、第27週(6月29日〜7月5日)には定点あたり報告数が7.03人まで上昇しました。これは警報レベルの目安(5.0)を大きく超える水準で、全国27都府県が警報レベルに達しています。ヘルパンギーナも第20週以降増加が続いており、咽頭結膜熱(プール熱)も西日本を中心に上昇傾向が続いています。

国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症週報の公表データをもとに作成(速報値)。ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱は入手できた週のデータのみ掲載しています。

今年の特徴

  • 手足口病は例年より早いペースで立ち上がり、九州・中国地方など西日本から東日本・首都圏へと拡大が進んでいます。
  • 3つとも0〜4歳(特に1歳前後)に報告が集中しており、集団生活の場である保育施設での広がりに最も注意が必要な時期です。
  • インフルエンザやRSウイルスなど冬型の感染症は落ち着いている一方、夏型の3疾患がそろって上昇しているのが今シーズンの特徴です。

ご自身の地域の最新の状況は、都道府県・市区町村の感染症情報センターのページ、または国立健康危機管理研究機構の感染症週報でも確認できます。流行状況は週単位で変わりますので、定期的なチェックをおすすめします。

2. 各感染症の特徴

手足口病ヘルパンギーナ咽頭結膜熱(プール熱)
主な病原体コクサッキーウイルスA6・A16、エンテロウイルス71型 などコクサッキーウイルスA群などアデノウイルス(3型・4型・7型など)
主な流行時期6〜8月6〜8月6〜9月
潜伏期間3〜6日2〜4日5〜7日
主な症状口の中・手のひら・足の裏・お尻の水疱性発疹。発熱は軽度突然の高熱(38〜40℃)、のどの奥(軟口蓋)の水疱・潰瘍発熱・のどの痛み・目の充血や目やに(結膜炎)の3点セット
主な感染経路飛沫感染・接触感染・糞口感染飛沫感染・接触感染・糞口感染飛沫感染・接触感染(プールの水、タオル共用でも)
経過の目安発熱1〜3日、発疹は7〜10日ほどで軽快高熱は2〜4日、口腔内病変は1週間ほどで軽快発熱4〜5日、結膜炎は1〜2週間続くことも
治療対症療法のみ(抗ウイルス薬なし)対症療法のみ(抗ウイルス薬なし)対症療法が中心(点眼薬など)
排泄物からの排出期間症状消失後も数週間、便中にウイルスが排出される手足口病と同じく、便中への排出が数週間続く主に急性期の分泌物・便から排出

3. それぞれの病気をもう少し詳しく

手足口病

口の中、手のひら、足の裏を中心に、痛みを伴う水疱性の発疹が出るのが特徴です。発熱は37〜38℃台の軽度なことが多く、熱が出ない子もいます。多くは軽症で自然に軽快しますが、まれに髄膜炎や脳炎、心筋炎などの合併症を起こすことがあるため、「高熱が続く」「嘔吐を繰り返す」「ぐったりしている」「呼びかけへの反応が鈍い」といった様子があれば速やかな受診が必要です。

見落とされがちなポイントとして、症状が治まった後も便の中にウイルスが数週間排出され続けます。発疹が消えた=感染力がなくなった、ではないという点を、職員間はもちろん保護者にも伝えておくことが大切です。

ヘルパンギーナ

急な高熱(38〜40℃)で始まり、のどの奥(軟口蓋・口蓋垂のあたり)に小さな水疱や潰瘍ができます。のどの痛みが強く、飲み込みを嫌がって水分摂取量が落ちやすいため、脱水への注意が特に必要です。
高熱に伴って熱性けいれんを起こすお子さんもいます。手足口病と同様、回復後も便からのウイルス排出が続きます。

咽頭結膜熱(プール熱)

発熱・咽頭炎・結膜炎(目の充血、目やに、涙目)の3つがそろうのが典型的な症状です。感染力が強く、タオルの共用やプールの水を介しても感染するため、この名前がついています。
学校保健安全法では「主要症状が消退した後2日を経過するまで」出席停止とする基準が定められている感染症で、多くの保育施設でもこの基準に準じた登園の目安が用いられています。

登園の目安について

手足口病・ヘルパンギーナは学校保健安全法上の出席停止の対象には明確に指定されておらず、法的な一律基準はありません。多くの自治体・保育施設では「発熱がなく、普段の食事や水分がとれ、全身状態が安定していること」を登園再開の目安としています。
一方、咽頭結膜熱(プール熱)は主要症状消失後2日を経過するまでという目安が広く使われています。いずれも自治体や園の基準・嘱託医の意見に沿って運用されているケースが多いため、園としての基準を職員間で統一し、あらかじめ保護者にも周知しておくことをおすすめします。


4. 保育施設での感染対策

3つとも特効薬やワクチンはなく、手洗い・排泄物の適切な処理・環境の清潔保持が対策の柱になります。

手洗い

  • 石けんと流水による手洗いが基本です。おむつ交換後・トイレ介助後・調理や配膳の前後は特に徹底しましょう。
  • アルコール消毒だけでは不十分な場合があります(エンテロウイルス属やアデノウイルスはアルコール抵抗性を持つものがあるため)。手洗いを基本とし、消毒は補助的に活用してください。

排泄物・嘔吐物の処理

  • 使い捨て手袋・エプロンを着用し、素手で触れないようにします。
  • 汚物は密閉して廃棄し、処理後は必ず手洗いを行います。
  • おむつ交換台は児童ごとに、またはシートを交換して都度清拭消毒します。

おもちゃ・環境表面の消毒 ― 次亜塩素酸ナトリウムの使い方

口に入れるおもちゃやドアノブ、手すりなど「よく触れる場所」の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)が広く使われています。濃度と使い方のポイントをまとめます。

希釈の目安(市販の塩素系漂白剤、原液濃度約5〜6%の場合)

用途濃度希釈方法(水1Lあたり)
おもちゃ・手すり・ドアノブなど通常の環境表面0.02%(200ppm)原液 約4mL(ペットボトルキャップ1杯弱)
嘔吐物・排泄物が付着した箇所、トイレ・おむつ交換台など0.1%(1,000ppm)原液 約20mL(ペットボトルキャップ4杯)

拭き取りのコツ

  1. 汚れを先に落としてから消毒する:嘔吐物や便などの有機物が残ったままだと消毒薬の効果が大きく落ちます。ペーパータオルなどでまず汚れを取り除いてから消毒液を使いましょう。
  2. 希釈液はその日のうちに使い切る:次亜塩素酸ナトリウムは時間の経過とともに濃度が下がるため、作り置きはせず、使う直前に希釈するのが基本です。
  3. 拭いたあとは乾燥させる:接触時間(濡れた状態を数分保つ)を意識し、拭いたあとは自然乾燥または水拭きで薬剤を残しすぎないようにします。おもちゃなど口に入れるものは、消毒後に水拭きで仕上げると安心です。
  4. 金属部分は腐食に注意:金属製の遊具や器具は、消毒後に水拭きしておくと傷みにくくなります。
  5. 換気をしながら、手袋を着用して行う:塩素臭がこもらないよう窓を開け、直接皮膚に触れないよう手袋を使用しましょう。
  6. 酸性の洗剤と混ぜない:トイレ用洗剤などの酸性製品と混ざると有毒な塩素ガスが発生するため、絶対に混ぜて使わないよう職員間で徹底してください。
  7. 保管は遮光・冷暗所で:直射日光や高温で分解が進み、効果が落ちます。

適切に管理され調合された次亜塩素酸ナトリウム消毒液は非常に高い消毒効果を有しています。また原液ベースのコストも非常に安いのが大きなメリットです。
しかし適切に管理しないと十分な効果が得られない点に注意が必要です。ラウンドでしばしば見かけるエラーは「薬液の作り置き」です。

環境除菌クロスの活用(ルビスタ・サラサイドなど)

手作業での希釈が難しい場面や、日常的なこまめな清拭には、あらかじめ薬液が含浸された環境除菌クロス(杏林製薬の「ルビスタ」や、サラヤの「サラサイド」などの製品)も有効です。
希釈の手間がなく、使用のたびに濃度が安定している点が強みで、テーブル・手すり・おもちゃなどの日常清拭に取り入れやすい選択肢です。

嘔吐物・排泄物など汚染が大きい場面では、まず汚れを除去したうえで、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液など、より高濃度での対応が必要な場合もあるため、「日常のこまめな清拭=除菌クロス」「汚染時のしっかり消毒=次亜塩素酸ナトリウム希釈液」と使い分けると、無理なく運用できます。

環境除菌クロスの効果と使用時の簡便さは非常に魅力的です。コストがやや高いというデメリットがありますが、次亜塩素酸系消毒薬の管理や調合の手間を考慮すると環境除菌クロスの導入は検討する価値が高いと考えます。

そのほかの基本対策

  • タオルの共用を避け、個人用タオルまたはペーパータオルを使用する
  • 咳エチケット(マスク、口元を覆う)を職員・年齢に応じて子どもにも促す
  • 室内の換気をこまめに行う
  • 発熱や体調不良が見られる子は、早めに保護者へ連絡し、無理な集団生活を避ける
  • 職員自身の体調管理も忘れずに(職員が媒介者にならないための手洗い・体調不良時の判断基準)

5. 職員向け・すぐ使えるチェックリスト

印刷して使用できるチェックリストを作成しました。
ご自由にダウンロードしてお使いください。



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