高齢者の尿路感染症予防|療養型病院・介護施設で見直したい排泄ケアと物品管理

感染対策

こんにちは。香川県を拠点に、医療機関・介護施設・保育施設の感染対策を支援している「つなぐ感染対策支援室」の横山です。

療養型病院や介護施設で、日々行われるおむつ交換や陰部洗浄。「いつものケア」だからこそ、職員によって方法が違ったり、用品の管理が長年変わっていなかったりすることはありませんか。

高齢者の尿路感染症予防では、排尿状態や尿道カテーテルの必要性なども確認が必要です。そのうえで、日常の排泄ケアと標準予防策を丁寧に行い、ケアを通じて細菌を運ばない仕組みを整えることが大切です。

1.排泄ケアは「汚れを広げない」流れで

尿路感染症は、細菌などが尿道から入り、膀胱や腎臓などに感染することで起こります。ただし、発症にはさまざまな要因が関わるため、「尿路感染症が起きた=ケアが不適切だった」とは言えません。

日々のケアでは、便などの汚れを尿道口周囲へ広げないことを意識しましょう。女性の陰部を拭く際は前から後ろへ進め、汚れた面で何度も拭き戻さないようにします。皮膚を強くこすらず、汚れをやさしく取り除くことも大切です。

おむつ交換の時刻だけで判断せず、排便後や汚染時には状態に応じて対応します。清潔を保つためといって過度な洗浄を繰り返すと、皮膚への負担になります。本人の皮膚状態や排泄状況に合わせ、清潔と安楽を両立させましょう。

2.手袋をしていても、手指衛生は必要です

標準予防策とは、感染症の診断の有無にかかわらず、すべての人のケアで行う基本的な感染対策です。

排泄ケアでは手袋を着用しますが、手袋は手指衛生の代わりにはなりません。ケア前と手袋を外した後に手指衛生を行い、利用者が変わるときは手袋も交換します。同じ人のケア中でも、便を処理した後に清潔な部位や物品を扱う際は、手袋を外して手指衛生を行い、必要に応じて新しい手袋を着用します。

特に見直したいのは、汚れた手袋のまま、おしり拭きの容器、洗浄ボトル、記録端末などに触れる場面です。ケアに必要な物品を先に準備し、途中で清潔な物品を取り出さずに済む流れを考えましょう。

目に見える汚れがある場合は、石けんと流水で手を洗います。汚れが見えない通常の場面ではアルコール手指消毒を基本とし、感染性胃腸炎が疑われる場合などは、病原体に応じた手洗いを行います。

3.PPEの交換と環境整備までが一連のケア

衣服に排泄物などが付着する可能性がある場合は、エプロンやガウンを使用します。陰部洗浄などで顔への飛散が予想される場合は、マスクや眼の防護も必要です。手袋やエプロン・ガウンは利用者ごとに交換し、再使用する眼の防護具は適切に洗浄・消毒します。

交換のタイミングが曖昧だと、せっかくのPPEが汚染を運ぶきっかけになります。「どこで外し、どこに捨て、どこで手指衛生を行うか」まで決めておくと実践しやすくなります。

また、ベッド柵、ポータブルトイレの手すり、ケア用品を置く台なども確認しましょう。清潔な物品と使用済み物品を分け、排泄物による汚染は速やかに除去し、必要な消毒を行います。消毒薬を増やすことより、汚染を広げずに片付けられる配置や動線を整えることが大切です。

4.陰部洗浄ボトルは、見た目だけで判断しない

陰部洗浄ボトルは、先端が身体に触れていなくても、洗浄時の跳ね返りや汚染した手袋によって汚れる可能性があります。

登録文献でも、未処理のまま利用者間で使い回さないことに加え、同じ人専用であっても、使用のたびに十分な洗浄・消毒を行う必要性が示されています。「専用だから大丈夫」と、水を継ぎ足すだけの運用になっていないか確認しましょう。

施設で見直したいのは、次の点です。

  • 使用済みと処理済みのボトルが区別できているか
  • 本体だけでなく、キャップやノズルも処理できているか
  • 製品に適した洗浄・消毒方法を決めているか
  • 処理後に十分乾燥させ、再汚染を防いで保管しているか

消毒方法や濃度・時間は、製品の材質やメーカーの指示を確認して決めます。ボトルの数が足りず手順を守れない場合は、必要数や処理の担当、代替用品も含めて見直しましょう。

5.尿道カテーテルを使用している方は、管理も確認

尿道留置カテーテルを使用している場合は、陰部の清潔に加え、尿の流れを妨げない管理が必要です。チューブの折れ曲がりや身体の下への巻き込みがないか確認し、尿バッグは膀胱より低い位置で、床につかないように保持します。接続部も不用意に外しません。

さらに、「今も留置が必要か」を医師・看護師と定期的に確認しましょう。失禁への対応だけを目的に留置することは避けます。

なお、留置中の尿路感染症予防を目的とした、尿道口周囲への日常的な消毒は推奨されていません。通常の清潔ケアを基本にすることが大切です。

6.職員が迷わず実践できる手順にそろえる

「丁寧にケアしましょう」だけでは、具体的な行動はそろいません。手袋を交換する場面、ボトルの処理方法、清潔物の置き場所などを、短い手順書や写真で共有しましょう。

おすすめは、実際のおむつ交換を想定し、準備から片付けまで職員同士で確認する方法です。手順を守りにくい場面があれば、個人の注意力だけに頼らず、物品の配置や数、業務の流れを調整します。

統一するのは、安全を守るための基本手順です。洗浄の程度や介助方法は、本人の状態や希望に合わせます。施設の実情に合い、忙しい時間帯にも続けられる方法を一緒に考えることが、ケアの質を支えます。

排泄ケアの見直しを、一緒に進めませんか

「今のボトル管理でよいのか分からない」「職員によって手順が違う」「研修をしても現場に定着しない」。そんなお悩みはありませんか。

つなぐ感染対策支援室では、感染管理認定看護師が、現場の排泄ケアや物品管理を確認し、施設に合った改善策を一緒に整理します。おむつ交換・手指衛生・PPEの着脱をテーマにした職員研修も対応しています。

まずは、気になっていることを一つお聞かせください。相談や研修のご依頼は、公式ホームページのフォームからどうぞ。


参考文献・資料

  1. 中上理紗子.排泄介助の場面.INFECTION CONTROL.2025,34(12),45–47(通巻1137–1139).
  2. CDC.Core Infection Prevention and Control Practices for Safe Healthcare Delivery in All Settings.https://www.cdc.gov/infection-control/hcp/core-practices/index.html
  3. CDC.Guideline for Prevention of Catheter-Associated Urinary Tract Infections(2009):Summary of Recommendations.https://www.cdc.gov/infection-control/hcp/cauti/summary-of-recommendations.html

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