こんにちは、つなぐ感染対策支援室の横山です。
このたびの災害により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。また、大変な状況の中で救護活動や復旧支援に尽力されている医療・介護・福祉・行政・ボランティアの皆さまに、深く敬意を表します。
避難生活では、感染症の流行や衛生環境の悪化が健康へ大きな影響を及ぼすことがあります。手指衛生やトイレ・排泄環境の管理、口腔ケア、食品衛生など、日々の小さな感染対策の積み重ねが、体調悪化や感染症の予防につながります。
日本環境感染学会では、避難所や被災地で役立つ感染対策のポイントをまとめた資料を公開しています。被災地で活動される方や支援に携わる方はもちろん、災害への備えとして平時から目を通しておくことをおすすめします。
▶避難所等に掲示する感染予防啓発ポスター:日本環境感染学会災害時感染制御支援チーム(DICT)
つなぐ感染対策支援室でも、香川県における災害時の感染対策体制の充実に向け、行政や関係機関との連携づくりに取り組んでいます。今後も地域の皆さまが安心して過ごせる環境づくりに貢献できるよう活動を続けてまいります。
香川県が公表した2026年第30週(7月20日〜7月26日)の感染症週報では、新型コロナウイルス感染症を含む定点把握感染症の報告患者総数が208人となり、前週の321人に対して64.8%まで減少しました。
手足口病、ヘルパンギーナ、新型コロナウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症はいずれも前週より減少しています。ただし、手足口病の流行警報は継続しており、中讃地区では手足口病とヘルパンギーナの報告が多い状況です。
この記事では、香川県感染症週報2026年第30週をもとに、今週の特徴と施設で確認したい感染対策をわかりやすく解説します。
1. 今週の全体像
2026年第30週の定点把握感染症の報告患者総数は208人で、前週の321人に対して64.8%となりました。前週からは113人、割合にして35.2%の減少です。

今週のポイントは次の4点です。
- 手足口病は定点あたり6.8人から3.2人へ減少したものの、流行警報は継続
- 感染性胃腸炎(ウイルス)が定点あたり3.9人で、今週の最多疾患
- 新型コロナウイルス感染症は定点あたり2.3人から2.0人へ減少
- ヒトメタニューモウイルス感染症は定点あたり1.4人から0.5人へ減少した一方、病原微生物検出情報では3検体から検出
全体としては減少傾向ですが、中讃地区では手足口病が定点あたり6.8人、ヘルパンギーナと感染性胃腸炎(ウイルス)がそれぞれ6.5人となっています。県全体の数字だけでなく、自施設がある地域の動向も併せて確認することが大切です。
定点あたり報告数は、県内すべての患者数ではなく、指定された定点医療機関からの報告をもとにした値です。実際の患者数そのものではなく、流行の傾向を見るための指標として確認してください。
2. 定点把握感染症の動向
今週の上位5疾患は以下のとおりです。

上位5疾患はいずれも前週より減少しました。
感染性胃腸炎(ウイルス)は県全体で51人、定点あたり3.9人でした。小豆地区は6.0人、中讃地区は6.5人と県平均を上回っています。下痢や嘔吐のある人が増えていないか、地域や施設単位で確認しておきましょう。
3. 手足口病は減少したものの流行警報が継続
手足口病は42人の報告があり、定点あたり報告数は前週の6.8人から3.2人へ減少しました。前週比は47.7%で、報告数は半分以下になっています。

地区別では、中讃地区が定点あたり6.8人と最も高く、警報基準の5.0人を上回っています。高松市は1.8人、小豆地区と東讃地区は2.0人、西讃地区は0人でした。
年齢別では、42人のうち1歳が24人と半数を超えています。2歳以下を合わせると32人で、全体の約4分の3を占めます。乳幼児が集団生活を送る保育園やこども園では、報告数が減ったからといって対策を緩めず、基本的な対策を続けましょう。
厚生労働省の手足口病に関する情報では、流水と石けんによる手洗い、タオルの共用を避けること、排泄物を適切に処理することが勧められています。
症状が治まった後も便からウイルスが排出される期間があるため、登園再開後も、おむつ交換やトイレ介助後の手洗いを丁寧に続けることが重要です。
手足口病・ヘルパンギーナなどの特徴や具体的な対策は、こちらの記事にもまとめています。
▶【保育施設向け】今、流行している三大夏かぜ―手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱

4. ヘルパンギーナとhMPVも減少

ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは38人、定点あたり2.9人で、前週の4.4人から減少しました。県全体では減少していますが、中讃地区は定点あたり6.5人で、引き続き報告が多い状況です。
発熱やのどの痛みによって水分が取りにくくなる場合があります。保育施設では、発熱の有無だけでなく、食事や水分摂取の状況、活気、尿量なども丁寧に観察しましょう。
ヒトメタニューモウイルス感染症(hMPV)
ヒトメタニューモウイルス感染症は7人、定点あたり0.5人で、前週の1.4人から減少しました。今週の報告は全員が3歳以下です。
一方、病原微生物検出情報では、東讃地区の1検体と西讃地区の2検体からヒトメタニューモウイルスが検出されています。定点報告と病原体検出は対象や集計方法が異なるため、単純に同じ数字として比較することはできませんが、乳幼児の呼吸器症状には引き続き注意が必要です。
5. 新型コロナウイルス感染症はわずかに減少
新型コロナウイルス感染症は47人の報告があり、定点あたり報告数は前週の2.3人から2.0人へ減少しました。前週比は88.7%です。
地区別では、中讃地区が定点あたり3.7人、小豆地区が3.5人、高松市が1.2人、東讃地区が1.0人、西讃地区は0人でした。県全体では減少していますが、地区ごとの差がある点には注意が必要です。
厚生労働省は、一般的な感染症対策として、咳エチケットや手洗いなどの実施を示しています。医療機関や介護施設では、報告数の増減だけで対策を大きく変えるのではなく、基本的な仕組みが機能しているかを確認しましょう。
- 職員・利用者の発熱や呼吸器症状を早期に把握できているか
- 症状がある人のマスク着用や動線の調整ができるか
- 居室、待合室、休憩室などの換気が確保されているか
- ケア内容に応じて必要な個人防護具を選択できているか
- 高頻度接触面(ドアノブや手すり、スイッチ類など)の定期的な清拭消毒を実施しているか
6. 全数把握感染症:結核3件、E型肝炎1件、梅毒1件
今週届け出られた全数把握感染症は以下のとおりです。

- 2類感染症:結核3件(高松2件、東讃1件)
- 4類感染症:E型肝炎1件(高松1件)
- 5類感染症:梅毒1件(中讃1件)
E型肝炎は、E型肝炎ウイルスによる急性肝炎です。ただし、今回の週報だけで個別事例の感染経路や原因食品を判断することはできません。
厚生労働省のE型肝炎Q&Aでは、豚肉・豚レバー、シカやイノシシなどの野生動物の肉を生で食べず、中心部まで十分に加熱すること、生肉と加熱済みの肉で箸や皿を分けることが示されています。施設の厨房や行事で肉類を扱う際は、加熱と交差汚染防止を改めて確認しましょう。
7. 病原微生物検出情報

細菌の検出報告はありませんでした。
ウイルスでは、ヒトメタニューモウイルスが3検体、ヒトパルボウイルスB19が1検体から検出されています。
また、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)の耐性遺伝子検出情報として、高松市の下気道炎患者の喀痰から検出されたKlebsiella pneumoniaeについて、IMP-1およびSHV型の耐性遺伝子が報告されています。
このCRE耐性遺伝子検出情報は、今週の全数把握感染症の届出件数とは別の欄に掲載された情報です。個別の医療機関や施設での発生状況を示すものとして過度に解釈せず、医療機関では検査結果の確実な情報共有、手指衛生、患者周辺環境の清潔保持、必要に応じた接触予防策など、基本的な薬剤耐性菌対策を確認しましょう。
また、病原微生物検出情報は限られた検体に基づくため、県内で流行するすべての病原体の割合を示すものではありません。
8. 今週の気象と感染対策
第30週の平均気温は32.5℃で、過去30年平均の28.3℃を4.2℃上回りました。平均湿度は62.0%です。
気温が高い時期は、購入した食品を長時間持ち歩かない、冷蔵品は早めに冷蔵庫へ入れる、調理済み食品を室温に放置しないなど、温度管理を意識することが重要です。
感染対策と同時に、職員や利用者、子どもの熱中症にも注意が必要です。換気のために窓を開ける場合も、室温を確認しながら冷房を併用し、「換気」と「暑さ対策」を両立させましょう。
9. 施設種別の対応ポイント

医療機関・診療所
- 小児外来では、手足口病、ヘルパンギーナ、呼吸器感染症の流行を踏まえて待合室の動線を確認する
- 受付時に発熱、咳、下痢などの症状を把握し、必要に応じて待機場所や診察動線を調整する
- CREが検出された場合の検査部門・病棟・感染対策担当者間の情報共有手順を確認する
- 標準予防策を基本に、感染経路とケア内容に応じて必要な経路別予防策を選択する
介護施設
- 発熱や咳のある利用者・職員を早期に把握し、必要に応じて動線やケア担当を調整する
- 居室や共用スペースだけでなく、職員休憩室や更衣室の換気も確認する
- 下痢や嘔吐のある利用者への対応では、手洗いと排泄物・汚染物の取り扱いを確認する
保育施設・こども園・病児保育
- おむつ交換後・トイレ介助後は、石けんと流水による手洗いを徹底する
- タオルやコップの共用を避け、口に入れる玩具やよく触れる場所を適切に清掃する
- 手足口病やヘルパンギーナの症状が治まった後も、排泄物の取り扱いを丁寧に続ける
- 発熱、咳、のどの痛みだけでなく、水分摂取量、尿量、活気など全身状態を観察する
おわりに
今週は、定点把握感染症の報告患者総数が前週より35.2%減少し、手足口病、ヘルパンギーナ、新型コロナウイルス感染症、ヒトメタニューモウイルス感染症も減少しました。
一方で、手足口病の流行警報は継続しており、中讃地区では手足口病やヘルパンギーナの報告が多い状態です。感染症の報告数は週ごとに変動するため、「減ったから対策をやめる」のではなく、手洗い、症状の早期把握、換気、排泄物の適切な処理、食品の加熱と温度管理といった基本対策を無理なく続けることが大切です。
「現在のマニュアルで対応できるか確認したい」
「職員に今の流行状況をわかりやすく伝えたい」
「対策を増やしすぎず、施設に合った方法を一緒に考えてほしい」
そのようなときは、つなぐ感染対策支援室へお気軽にご相談ください。
医療機関、介護施設、保育施設など、それぞれの現場の人員・設備・業務に合わせて、無理なく続けられる感染対策を一緒に考えます。
現在、期間限定の「感染対策課題整理サポート」も実施しています。
▶感染管理認定看護師が施設を訪問して課題を整理|感染対策課題整理サポート




コメント