2026年5月、南大西洋を航行中のクルーズ船でハンタウイルス感染症のアウトブレイクが発生したとの報道が相次ぎ、SNSでも「ハンタウイルスって何?」「日本に来るの?」という声を耳にするようになりました。
今回は、医療・介護現場で働く皆さんに向けて、正確な情報をわかりやすくお伝えします。
ハンタウイルスとはどんなウイルスか
ハンタウイルスは、ネズミなどのげっ歯類が自然宿主のウイルスです。ヒトへの感染は主に、げっ歯類の唾液や排泄物との接触、あるいは排泄物を含む粉塵の吸入によって起こります。
分布する地域によって引き起こす疾患が異なり、南北アメリカ大陸のウイルスは**ハンタウイルス肺症候群(HPS)を、ユーラシア大陸のウイルスは腎症候性出血熱(HFRS)**を引き起こすことが知られています。HPSは発熱・咳・筋肉痛などの症状が急速に進行し、致命率は約40〜50%と高い感染症です。
基本的にはヒトからヒトへは感染しません。例外的に、南米のアンデスウイルスでヒト-ヒト感染の事例が報告されていますが、過去の事例では濃厚な飛沫・直接接触が原因であり、適切な隔離と接触者管理によって終息に至っています。
今回起きていること
2026年5月2日、南大西洋上を航行中のクルーズ船(MV ホンディウス号)でのハンタウイルス感染症の発生がWHOに報告されました。船は4月に南米・南極圏を航行しており、5月4日時点で7例(確定2例・疑い5例)が報告され、うち3例が死亡しています。確認されている症例は当該クルーズ船関連に限定されています。 JIHS
さらに、5月7日には新たな動きが報道されています。クルーズ船の乗客だったオランダ人女性(69歳)は南アフリカ・ヨハネスブルクの病院でハンタウイルスにより死亡しましたが、その直前、乗り継ぎのKLM便に搭乗しようとして体調不良のため降機させられていました。そのフライトに乗務していた客室乗務員が、軽度の症状を呈してアムステルダムの病院に入院・隔離され、ハンタウイルスの検査を受けていることをオランダ公衆衛生当局が確認しました。 NL Times
現時点で検査結果は出ておらず、感染確定ではありません。この事例は調査中であり、引き続き情報を注視する必要があります。 NL Times
→5月8日追記:検査結果は陰性であったと発表されました
日本への影響はどうか──現時点では「極めて低リスク」
国立健康危機管理研究機構(JIHS)は、日本国内での感染リスクについて以下のように評価しています。
今回の原因ウイルスの自然宿主(北米のシカネズミ、南米のピグミーライスラットなど)は日本国内には生息していないため、自然界での感染サイクルは成立しません。JIHSは日本国内で感染する可能性は極めて低いと評価しています。また、日本国内でハンタウイルス肺症候群の患者発生はこれまで一例も報告されていません。
現時点では過剰に心配する必要はなく、まずは落ち着いて情報を見守ることが大切です。
この機会を「見直し」に活かしてほしい
今回の客室乗務員の事例は、感染症の世界的なつながりを改めて実感させるニュースです。
ここで強調したいのは、
「特別なことをしなければ」ではなく
「いつもの感染対策を、きちんとやる」ことが最大の備えだ
ということです。
医療・介護現場は、日常的にさまざまな感染症のリスクにさらされています。インフルエンザ、ノロウイルス、COVID-19、そして今年は麻疹の流行も続いています。ハンタウイルスのような新興感染症の報道があるたびに、「備えはできているか」と問い直す機会をもらっていると捉えることができます。
この機会に、ぜひ職場の感染対策を振り返ってみてください。
- 手指衛生の実施タイミングと方法は適切か
- PPE(手袋・マスク・ガウンなど)の着脱手順は正しく行われているか
- 環境整備・清掃の頻度と方法は十分か
- 感染症発生時の報告・対応フローは職員全員が把握しているか
私のこれまでの経験上、普段できていないことは有事の際もできません。
普段から正しい感染対策を日々続けておくことが何より大切です。
日頃の感染対策が「なんとなく」になっていないか、
立ち止まって確認してみてください。
不安なこと、職場の感染対策についてご相談がある方は、つなぐ感染対策支援室までお気軽にお問い合わせください。
▶ ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
情報は2026年5月7日時点のものです。状況は変化する可能性がありますので、JIHSや厚生労働省の最新情報もあわせてご確認ください。
「つなぐ感染対策支援室」では、医療・介護・保育施設の感染対策に関するご相談、職員教育、マニュアル・BCP整備のサポートを行っています。
感染管理認定看護師が、現場の状況に合わせてわかりやすくサポートします。
具体的に相談したいことが定まっているご施設、なんとなく課題を感じていてまずは状況の整理から行いたいご施設。それぞれに対応した相談メニューを設けております。
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併せてご覧ください。




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