マダニが媒介する重症感染症に注意
先日、香川県内で高齢男性が「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」に感染し、亡くなられたという報道がありました。男性は自宅近くの山でマダニに咬まれたとみられており、発熱や倦怠感などの症状が出現した後に入院加療を受けていました。
SFTSは西日本を中心に報告されている感染症であり、香川県でも毎年のように患者報告があります。特に春から秋にかけてはマダニの活動が活発になるため、医療・介護・保育の現場でも知識を持っておくことが重要です。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは
SFTSは「Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome」の略で、日本語では「重症熱性血小板減少症候群」と呼ばれます。
原因はSFTSウイルスで、主にウイルスを保有したマダニに咬まれることで感染します(すべてのマダニがSFTSウイルスを持っているわけではない)。2013年に日本国内で初めて患者報告がされて以降、西日本を中心に報告が続いています。
潜伏期間は6〜14日程度で、以下のような症状がみられます。
- 発熱
- 全身倦怠感
- 食欲低下
- 嘔吐・下痢などの消化器症状
- 白血球減少
- 血小板減少
- 意識障害
- 出血症状
特に高齢者では重症化しやすく、日本国内での致命率は約30%とされています。
香川県はSFTSに注意が必要な地域
SFTSは全国どこでも起こる感染症ではなく、発生には地域差があります。特に西日本では患者報告が多く、四国地方は代表的な流行地域です。
香川県でも継続的に患者報告があり、死亡例も複数確認されています。今回報道された事例では、2013年以降で県内6例目の死亡例とされています。
また、隣県の愛媛県でも多くの患者報告があり、四国内では広くマダニが生息していることが分かっています。
そのため、香川県内の医療機関においてSFTSは「珍しい感染症」ではなく、日常的に意識すべき感染症の一つと言えます。
感染対策の基本は「マダニに咬まれないこと」
SFTSに対して最も重要なのは予防です。
マダニは草むらや山林、畑、河川敷などに生息しています。キャンプや農作業、草刈り、散歩などでも接触する可能性があります。
予防のポイントは以下の通りです。
屋外活動時の服装
- 長袖・長ズボンを着用
- 足を覆う靴を履く
- 肌の露出を減らす
- 明るい色の服でマダニを見つけやすくする
防虫対策
- ディートやイカリジン含有の虫よけを使用
- 帰宅後は衣服や体を確認する
- 入浴時にマダニ付着がないか確認する
また、ペットを介した感染も報告されているため、犬や猫が屋外活動をする家庭でも注意が必要です。
私も犬を飼っていますが、散歩の後は被毛を拭きながらマダニが付着していないか確認しています。草むらに入っていなくても、お腹の辺りにくっついている時があるので、やはり注意が必要です。
「マダニに咬まれた」と受診した場合の対応
外来で「マダニに咬まれた」と相談を受けた場合、まず相談者には無理に自分で引き抜かないことを伝えましょう。
無理に引き抜いた場合、マダニの口器が皮膚内に残ることがあり、炎症や感染リスクにつながります。
マダニは引き剥がさず、そのままの状態で受診してもらい、適切な処置で取り除きましょう。
医療機関で確認したいポイント
- いつ咬まれたか
- 山林や草地への立ち入り歴
- 発熱や倦怠感の有無
- 消化器症状の有無
- 皮膚所見
- 高齢者や基礎疾患の有無
特に、発熱・消化器症状・血小板減少を伴う場合にはSFTSを疑う視点が重要です。SFTSの潜伏期間中(6〜14日程度)はこれらの症状が現れないか注意するよう患者に伝える必要があります。
地域全体での注意喚起が重要
SFTSはワクチンや特効薬が限られており、重症化すると命に関わる感染症です。SFTS以外にも、マダニが媒介する感染症は日本紅斑熱やライム病などがあります。感染対策として大切なことは「マダニに咬まれない」という基本的な予防行動になります。
これから草刈りや農作業、レジャーが増える季節になります。
「自分は大丈夫」と思わず、マダニ対策を日常の習慣として取り入れていきましょう。
地域の患者さんに限らず、スタッフがレジャーなどでマダニに噛まれるリスクもあるため、職員の健康管理の一環として、この時期に注意喚起しておくことは有効と考えます。
厚生労働省にリーフレットが用意されているので、これらのツールを活用し周知することをお勧めします。
厚生労働省:ダニ媒介感染症
厚生労働省:マダニ対策、今できること(PDF)
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