感染対策はコストではなく「経営投資」である─ 誤嚥性肺炎・尿路感染症による見えない損失、あなたの施設は把握していますか?

感染対策

こんにちは、つなぐ感染対策支援室の横山です。

先日、Instagramに初めて私が喋っている動画を上げました。
ブログは文章で私の考えなどをお伝えするので、どうしても言葉が硬くなりがちなのですが、
動画では私の実際の喋り口調や滑舌の悪さまで知ることができます。

「あ、意外とこんな声なんだ」とか「意外と悪いやつじゃなさそう」など
感想は色々あると思います。ぜひご覧いただけると私も浮かばれます。
Instagramアカウントはtsunagu_infectionです。ぜひ一度足を運んでみてください。

さて今回は感染対策とお金の話です。
「コロナ禍は終わった」「今は特に困っていない」「感染対策が必要なのは冬だけ」

施設管理者の方とお話しすると、こうした声をよく耳にします。
お気持ちはよくわかります。あの数年間の緊張を乗り越え、ようやく落ち着いてきた今、
また「感染対策」という言葉を正面から受け取るのは少し疲れる、という感覚もあるでしょう。

でも、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
あなたの施設では先月、何件の緊急入院が発生しましたか?


「感染対策」は流行感染症だけの話ではない

多くの介護施設で、感染対策といえば「ノロウイルス対策」「インフルエンザ対策」「コロナ対策」といった、いわゆる”流行りの感染症”への対応がイメージされます。

しかし実際には、介護施設における感染症の主役は、日常的なケアの中に潜んでいます。

誤嚥性肺炎尿路感染症です。

  • 肺炎で入院した70歳以上の高齢者のうち、7割以上が誤嚥性肺炎(厚生労働省)
  • 尿路感染症は高齢者施設における入院原因の上位を常に占め、特に女性・カテーテル留置中の利用者に多発

これらは「たまたま起きた病気」ではありません。日々の口腔ケアの質、食事介助の方法、排泄ケアの手技、環境の清潔管理──そのひとつひとつが、発症率を左右します。つまり、感染対策は日常ケアそのものと直結しているのです。


「1人の入院」が施設にもたらす損失を試算する

ここで、少し経営的な視点で考えてみましょう。

特別養護老人ホームを例に取ります。

介護報酬の仕組み上、利用者が入院すると施設への報酬は大幅に減少します。
入院翌日から算定できるのは「外泊時費用」として1日あたり246単位(約2,460円)のみとなり、通常の基本報酬(要介護5・多床室で約8,650円/日)と比べると、1日あたり約6,000円以上の収入減が生じます。

【試算例:誤嚥性肺炎による入院が1件発生した場合】

  • 平均入院日数(肺炎):約21日
  • 通常収入との差額:約6,000円 × 21日 = 約126,000円の損失
  • ※外泊時費用が算定できるのは1か月あたり6日が上限となるため、長期入院になるほど施設収入への影響は大きくなります。

さらに、これはあくまで「介護報酬の減収」だけの話です。実際には以下のコストも発生します。

  • 入院対応・家族への連絡・書類作成にかかる看護・介護スタッフの労働時間
  • 退院後の状態悪化に伴うケアの重度化と追加の人的コスト
  • 長期入院になった場合の退所・空床リスク(特に待機者のいない施設)
  • 繰り返す入院によるスタッフの疲弊とモチベーション低下

仮に年間で誤嚥性肺炎や尿路感染症による入院が5件発生したとすれば、試算上の直接損失だけで60万円超。間接コストを含めればその数倍に上る可能性があります。


「防げる入院」がある、という視点

ここで重要なのは、こうした入院の一部は、適切なケアと知識によって予防できるという事実です。

誤嚥性肺炎の予防に有効なのは、感染管理の視点を取り入れた口腔ケアの徹底、食事姿勢・介助方法の見直し、他の利用者からの水平伝播を防ぐための環境整備です。
尿路感染症の予防には、排泄ケア時の手技の標準化と、尿道カテーテル管理の適切な知識が欠かせません。

これらは、「医療の話」ではなく「介護の話」です。日々現場にいる介護職員の知識とケアの質が、利用者の命と施設の経営の両方を守ります。


感染対策への投資が、経営の安定につながる

「感染対策にお金をかける余裕はない」と感じる管理者の方もいるかもしれません。しかし視点を変えれば、感染対策への投資は、入院による損失を防ぐための経営投資です。

1回の予防可能な入院を防ぐことができれば、その効果はすでにプラスに転じます。


最後に

私は感染管理認定看護師として、急性期病院での15年間の経験と感染管理の専門知識を活かし、介護施設・医療機関向けの感染対策支援を行っています。

流行感染症の対策はもちろんのこと、誤嚥性肺炎や尿路感染症の予防に関する職員教育、ケアの見直しサポート、感染対策マニュアルの整備なども承っています。

「うちの施設はどのくらいリスクがあるんだろう?」と思った方、ぜひ一度ご相談ください。一緒に、施設の「見えない損失」を見える化するところから始めましょう。

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